妊娠と食事

妊娠と食事

この記事でわかること

  • 妊娠中に意識して摂りたい4つの栄養素(葉酸・鉄・カルシウム・DHA)と、食事での摂り方
  • 生もの・アルコール・カフェイン・水銀の多い魚など控えたい食材の目安量を表で整理
  • 妊娠初期・中期・後期で意識すべき食事ポイントの違い
  • つわりがつらい時に食べやすい食品リストと、吐き気を和らげる食べ方
  • 妊娠前BMI別の推奨体重増加量と、質を落とさない体重管理の考え方

公的情報源: 厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」(参照)/内閣府食品安全委員会(参照

先に要点をまとめます

妊娠中の食事で大切なのは、「何を増やすか」と「何を控えるか」の2つを押さえることです。栄養を完璧に摂ろうと気負う必要はありません。

特に葉酸・鉄・カルシウム・DHAは不足しやすく、意識して摂る価値があります。一方で、生もの・アルコール・過剰なカフェインは控えめにするのが安心です。

この記事の要点
  • 増やしたいのは葉酸・鉄・カルシウム・DHA。葉酸は妊活中からサプリで補うのが現実的
  • 控えたいのは生もの・生肉・アルコール・過剰なカフェイン・水銀の多い魚・レバーの摂りすぎ
  • つわり中は「食べられるものを、食べられるときに」が基本。少量をこまめに
  • 体重は妊娠前BMIで目安が変わる。増えすぎも増えなさすぎも赤ちゃんに影響する

体調や妊娠週数、持病の有無によって最適な食事は人それぞれ違います。気になる症状や具体的な食事制限は、自己判断で極端にせず、かかりつけの産婦人科や助産師に相談してください。妊娠初期の過ごし方全般は妊娠初期は注意が必要でまとめています。

目次

妊娠中に積極的に摂りたい栄養素

妊娠中は赤ちゃんの細胞・臓器・骨・脳が急速に育つため、通常時より多くの栄養素が必要です。まず優先的に意識したい4つを整理します。

不足しやすい順に挙げると、葉酸・鉄・カルシウム・DHAの4つです。それぞれ役割と摂れる食品が異なります。

栄養素おもな役割多く含む食品摂り方のポイント
葉酸神経管の発達を助ける緑黄色野菜・納豆・いちご熱に弱いのでサプリ併用が現実的
貧血を防ぎ酸素を運ぶ赤身肉・あさり・小松菜ビタミンCと一緒に吸収率アップ
カルシウム骨・歯の形成乳製品・豆腐・小松菜不足すると母体の骨から使われる
DHA脳・神経・視力の発達サバ・イワシ・アジ小型の青魚を週2〜3回

葉酸:赤ちゃんの神経管の発達を助ける

葉酸はビタミンB群の一種で、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管の発達に欠かせません。

神経管がつくられるのは妊娠4〜6週ごろ。妊娠に気づく前の時期にあたるため、妊娠を希望した段階から意識するのが理想です。

厚生労働省は、妊娠を計画している女性に対し、食事に加えてサプリメントから1日400μgの葉酸を摂るよう推奨しています。食事から摂れるのは、枝豆・ほうれん草・ブロッコリーなどの緑黄色野菜、納豆、アボカド、いちごなど。

ただし葉酸は熱に弱く、調理で失われやすいのが弱点です。食事だけで安定して必要量を満たすのは難しいため、サプリで補うのが現実的でしょう。

鉄:貧血を防ぎ赤ちゃんに酸素を届ける

妊娠中は血液量が増えるため、鉄の必要量が大きく増えます。鉄が不足すると鉄欠乏性貧血になりやすく、疲れやすさ・動悸・息切れが出るほか、赤ちゃんへの酸素供給にも関わります。

鉄を多く含むのは、赤身の肉・あさり・ひじき・小松菜・豆腐など。野菜や豆に含まれる鉄(非ヘム鉄)は、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がります。レモンをかける、野菜と組み合わせるといった工夫が効果的です。

カルシウムとDHA:骨・歯・脳の発育に必要

赤ちゃんの骨や歯の形成にはカルシウムが必要です。摂取量が足りないと母体の骨から使われてしまうため、妊婦さん自身の骨密度にも関わります。乳製品・小松菜・豆腐・煮干しだしの味噌汁などで意識的に補いましょう。

DHA(ドコサヘキサエン酸)は青魚に多いオメガ3脂肪酸で、赤ちゃんの脳・神経・視力の発達を助けます。サバ・イワシ・サンマ・アジを週2〜3回が目安です。

ただし大型魚(マグロ・キンメダイなど)は水銀が多いため、頻度には注意が必要。詳しくは次の章で整理します。

妊娠中に避けたい食品・飲み物

妊娠中は胎盤を通じて、食べたものの成分が赤ちゃんに届きます。普段は問題ない食品でも、妊娠中はリスクになるものがあります。

控えたい食材と、その目安量を先に表でまとめます。

食材・飲み物注意する理由目安
生魚・生牡蠣・寿司リステリア菌・ノロウイルス新鮮なものを少量・頻繁は避ける
生肉・生ハム・レアの肉トキソプラズマ感染しっかり加熱する
アルコール胎児への影響完全に控える
カフェイン過剰摂取の影響1日200〜300mg未満
レバービタミンAの過剰週1回・100g程度まで
水銀の多い魚水銀の蓄積摂取頻度に注意(後述)

生魚・生肉・加工肉:菌や寄生虫に注意

生の魚介類(刺身・寿司・生牡蠣など)には、リステリア菌やノロウイルスが含まれることがあります。妊娠中は免疫の働きが下がり、食中毒にかかりやすく重症化しやすい状態です。

完全な禁止ではありませんが、新鮮なものを選び、頻繁な摂取は控えるほうが安心でしょう。

生肉(レアのステーキ・ユッケ・生ハムなど)は、トキソプラズマ感染のリスクがあります。妊娠中の初感染は赤ちゃんに影響する可能性があるため、肉類はしっかり加熱して食べるのが基本です。

アルコールとカフェイン:量と頻度を管理する

アルコールは「安全な摂取量はない」とされ、妊娠中は完全に断つことがすすめられています。胎児性アルコール症候群(FAS)のリスクがあり、少量でも影響を否定できません。

カフェインは、WHOや日本産科婦人科学会ともに1日200〜300mg未満を目安としています。コーヒーなら1日1〜2杯程度ですが、紅茶・緑茶・コーラ・エナジードリンクにも含まれるため、合計量で考えてください。

カフェインレス・ノンカフェインの飲み物に置き換えると、量を気にせずに済んで楽になります。

レバーの摂りすぎと水銀の多い魚

レバーは鉄・葉酸が豊富な一方、ビタミンAが非常に多い食品です。妊娠初期のビタミンA過剰摂取は赤ちゃんへの影響が指摘されているため、鶏レバーは週1回・100g程度を目安にし、毎日は控えましょう。

水銀の多い魚として特に注意したいのは、クロマグロ(本マグロ)・メカジキ・キンメダイ・マカジキなど。内閣府食品安全委員会が妊婦向けに摂取頻度の目安を公表しています。サバ・イワシ・アジなど小型の魚は水銀が少なく、安心して食べられます。

妊娠初期・中期・後期の食事ポイント

妊娠は約40週、大きく初期・中期・後期の3段階に分かれます。赤ちゃんの育ち方が時期で変わるため、食事で意識する点も変わります。

  1. 初期(〜15週):葉酸の積極摂取とつわり対策
  2. 中期(16〜27週):鉄分補給と体重管理
  3. 後期(28週〜):むくみ対策と出産への蓄え

初期(〜15週):葉酸の積極摂取とつわり対策

妊娠初期は、赤ちゃんの神経管・臓器・四肢の基礎ができる、とても大切な時期です。葉酸を確実に摂ることが最優先になります。

同時に、多くの妊婦さんがつわりに悩む時期でもあります。食べられるものを、食べられるときにが基本方針。完璧な食事を目指さず、胃が落ち着く食品を少量ずつ摂れば十分です。

中期(16〜27週):鉄分補給と体重管理

つわりが落ち着き食欲が戻る中期は、鉄・たんぱく質・カルシウムをしっかり補う好機です。赤ちゃんの体重増加が本格化し、母体の血液量も増えるため、鉄欠乏性貧血が起こりやすくなります。

この時期から体重も増えやすくなります。カロリーを抑えつつ、栄養密度の高い食品を選ぶ意識が大切。体重管理の具体的な目安は妊娠中期の注意点もあわせて確認してください。

後期(28週〜):むくみ対策と出産への蓄え

後期は子宮が大きくなって胃が圧迫され、一度にたくさん食べられなくなります。1日3食にこだわらず、4〜5回に分けて少量ずつ食べる「分食」が効果的です。

むくみが出やすい時期でもあるため、塩分は控えめに。カリウムを多く含むバナナ・ほうれん草・いも類を取り入れましょう。出産・授乳に向けてエネルギーと栄養を蓄える時期です。

つわり中でも食べやすい食品と工夫

妊娠初期のつわりは、食べること自体がつらくなるほどの症状です。「何も食べられない」「赤ちゃんへの影響が心配」という不安は多くの方が抱えます。

つわりの期間は短く、赤ちゃんはまだとても小さいため、栄養が少し不足しても直接的な影響は限定的とされています。まずは自分が食べられるものを探すことから始めましょう。

つわり中に食べやすい食品リスト

個人差はありますが、冷たい・さっぱりした・においが少ないものが受け付けやすい傾向があります。

  • おにぎり・冷ごはん・お茶漬け:温かいより冷たいほうが食べやすいことも
  • クラッカー・乾パン・シリアル:空腹時の吐き気を和らげる
  • 冷たい豆腐・ゼリー・ヨーグルト・果物:においが少なくさっぱり
  • 梅干し・レモン・酢の物:酸味で気分がすっきりすることがある
  • そうめん・うどん:消化がよく胃への負担が少ない

少量頻回食と食べ方のコツ

空腹になると吐き気が強まることがあります。「少量をこまめに食べる」ことで血糖値の急な変動を防ぎ、吐き気を和らげられます。起き上がる前にベッドサイドにクラッカーを置き、起床直後に食べるのも有効です。

水分補給も大切です。吐き気でお茶も飲めないときは、アイス・炭酸水・スポーツドリンクなど、飲める形で水分を確保してください。水分が全く取れない、嘔吐が1日に何度もあるといった場合は、自己判断で我慢せず産院に相談しましょう。

妊娠中の体重管理と食事の関係

妊娠中の体重増加は赤ちゃんの発育に直結しますが、増えすぎも増えなさすぎも問題です。妊娠前のBMIに応じた目安を知り、食事でコントロールします。

妊娠前BMI別の推奨体重増加量

2021年に厚生労働省が改訂した「妊産婦のための食生活指針」では、妊娠前BMIに応じた推奨体重増加量が示されています。

妊娠前の区分BMI推奨体重増加量
低体重18.5未満12〜15kg
普通体重18.5〜25未満10〜13kg
肥満25以上個別対応(目安5〜7kg)

以前の基準より上限が引き上げられています。背景には、低出生体重児の増加が問題視されてきた経緯があります。「太りすぎ注意」の意識が先行しすぎると、必要な栄養まで不足する恐れがあるため注意が必要です。

太りすぎ・太らなさすぎ、どちらにもリスク

体重が増えすぎると、妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・難産・帝王切開のリスクが上がります。逆に増えなさすぎると、赤ちゃんが低出生体重児になりやすく、発育や将来の健康に関わる可能性があります。

カロリーを調整する場合でも、たんぱく質・葉酸・鉄・カルシウムといった必須栄養素は削らないことが大切です。

体重管理の基本は「野菜・たんぱく質を優先し、白米・菓子・揚げ物の量を調整する」こと。食事制限よりも食事の質の見直しを優先してください。産院の栄養指導も積極的に利用しましょう。

まとめ

妊娠中の食事は、増やす栄養素と控える食材を押さえれば、必要以上に神経質にならずに整えられます。

この記事のまとめ
  • 葉酸・鉄・カルシウム・DHAを意識して摂る。葉酸は妊活中からサプリで補うのが現実的
  • 生もの・生肉・アルコール・過剰なカフェインは控える。レバー・水銀の多い魚は頻度に注意
  • つわり中は「食べられるものを、食べられるときに」。少量頻回食が吐き気対策に有効
  • 体重増加の目安は妊娠前BMIで変わる。栄養の質を落とさずに管理する
  • 時期(初期・中期・後期)で意識する栄養素と注意点が変わるため、週数に合わせて見直す

体調・妊娠週数・持病によって最適な食事は人それぞれです。気になることがあれば、自己判断で極端な制限はせず、かかりつけの産婦人科や助産師に相談してください。

妊娠の時期ごとの注意点は、妊娠初期は注意が必要妊娠中期の注意点もあわせてご覧ください。

よくある質問

妊娠中の食事について、よく寄せられる質問をまとめます。

Q1:妊娠中に刺身や寿司は食べてはいけませんか?

完全な禁止というわけではありませんが、リステリア菌・ノロウイルス・アニサキスなどのリスクがあるため、頻繁な摂取はおすすめしません。妊娠中は免疫が下がり、食中毒にかかりやすく重症化しやすい状態です。

どうしても食べる場合は、新鮮なものを信頼できるお店で少量にとどめ、体調が優れないときは避けましょう。不安な場合は主治医に相談してください。

Q2:葉酸はいつから飲み始めればよいですか?食事だけで補えますか?

神経管がつくられるのは妊娠4〜6週と早い時期のため、妊娠を希望したタイミング(妊活開始時)からサプリで摂り始めるのが推奨されています。

食事からも葉酸は摂れますが、調理で失われやすく、食事だけで必要量(サプリ由来400μg/日)を安定して補うのは難しいのが実際です。サプリと食事の両方で補うのが安心でしょう。

Q3:つわりがひどくて何も食べられません。赤ちゃんへの影響はありますか?

妊娠初期のつわりの時期、赤ちゃんはまだとても小さく、母体の蓄えから必要なものを得ています。1〜2週間ほとんど食べられなくても、赤ちゃんへの直接的な影響は限定的なことが多いとされています。

ただし、水分が全く取れない・体重が著しく減る・嘔吐が1日に何度もあるといった状況(妊娠悪阻)では、医療機関での点滴治療が必要になることがあります。つらい場合は我慢せず、早めに産院に相談してください。

Q4:妊娠中のコーヒーはどのくらいなら飲んでいいですか?

WHOや厚生労働省の目安では、1日のカフェイン摂取量を200〜300mg未満に抑えることが推奨されています。コーヒーはカップ1杯(150〜200ml)あたり約60〜100mgのため、1日1〜2杯程度が目安です。

ただし紅茶・緑茶・コーラ・チョコレートにもカフェインが含まれるため、それらを合わせた1日の総量で考えてください。気になる方は、カフェインレスコーヒーや麦茶・ルイボスティーに切り替えると安心です。

Q5:体重が増えすぎていると言われました。食事を減らすべきですか?

カロリーの調整は有効ですが、必須栄養素まで削らないことが大切です。たんぱく質・葉酸・鉄・カルシウムを保ちながら、白米・菓子・揚げ物の量を見直すのが基本になります。

増やすべきか減らすべきかは、妊娠前のBMIや週数、赤ちゃんの育ち方で変わります。極端な食事制限は避け、産院の栄養指導を受けながら調整してください。

免責事項

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。妊娠中の食事・栄養管理は個人の体調・妊娠週数・既往症によって異なります。具体的な食事制限やサプリメントの摂取については、担当の産婦人科医または助産師にご相談ください。

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この記事を書いた人

保育士の Inoue です。保育の専門家として10年以上働きながら、2人の子どもを育てています。保育士として学んだ専門知識と、2児の母として日々実践していることを合わせてお届けします。

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